第18回ふるさと回帰フェアによせて
-結成20年、新たな地平への飛躍をめざそう!-

 ふるさと回帰支援センターは今年11月、結成20年になります。
 振り返るに、あっという間の20年でした。気がつけば、東京交通会館8階の移住情報センターには、東京都を含む44都道府県1政令市の移住相談ブースが所狭しと並び、北海道から沖縄までの全国各地の移住情報が溢れ、移住相談も年間約5万件に達しようかという盛り上がりです。地道な取り組みではありましたが、ここに20年間のふるさと回帰運動の歴史が凝縮されていると考えます。この運動に協力いただいている各都道府県、会員自治体に心から感謝申し上げます。

 この運動は、1960年代に集団就職などでふるさとを離れた団塊世代に定年後、高齢化・少子化による人口減が加速度的に進む故郷に帰り(ふるさと回帰)、地域活性化に取り組み、ゆとり・豊かさが実感できる暮らしを享受していただこうと提起されたものでした。
 戦後77年、この国は先の大戦の敗北から立ち上がり、荒廃した国土を、経済成長を糧に復興を成し遂げるために、地方から大都市へ多くの若者たちを集め、その力で昭和30年代からの高度経済成長を達成しました。1990年前後には世界に冠たる経済大国となり、世界にその存在をアピールしました。
 しかし、それもバブル崩壊により、失われた30年と言われるように失速し、現在に至っています。こうした状況下で、もう一度、今度は大都市から地方へのふるさと回帰運動で、この国を地域から再生しようと農協・漁協・森林組合、経団連、生協などさまざま団体の協力を得ながら「100万人のふるさと回帰運動」として2002年11月に立ち上げたものです。

 低迷の時もありました。しかし、2008年のリーマンショックが、若者たちに地方で暮らすことや働くことの喜びや可能性に気づかせ、希望を与えました。その当時、移住に踏み切り、ふるさと回帰した先輩移住者はすでに10年を越え、先輩移住者としてそれぞれの地域に根ざし、成果を上げ、活躍しています。
 振り返れば、1990年代前半のバブル崩壊が、従来からの経済的成長が全てであるかのような国造りに疑問符を投げかけ、多様な価値観による持続可能な地域づくりこそが次の時代を拓くのではと提案されたにも関わらず、新自由主義的な競争社会の推進や規制緩和、グローバル化の推進などによる政策展開で当面の課題解決を先送りしました。そして、2008年にはリーマンショックという金融危機に見舞われ、現在まで続く「失われた30年」と言われるデフレ下のもとでの行き場のない混迷の時代が続いています。

 こうした中で、一昨年来のコロナ禍が追い打ちをかけるように、日本社会に新たな価値観による国造りを迫っているように思われます。それはすなわち、分散型社会の推進などの180度真逆の見直しではないでしょうか。
こうしたこともあって、昨年来の4次に渡る緊急事態宣言の発出もあり、移住相談件数は右肩上がりで、移住実績はしっかりと地面に足を置いて踏ん張り、受け皿を整備し、取り組んだ県や市町村においては全国的にはっきりとした増加傾向にあります。
 では、何が課題かといえば移住希望者に比べ、移住者を受け入れ、本気になって地域再生や活性化に取り組みたいと決意する自治体が、ここ10年間の移住希望者の数に比べ、まだまだ少ないことです。
 コロナ禍もあって、昨年の出生数は81万人まで落ち込み、地域の少子化・高齢化は待ったなしで進んでいます。このコロナ禍を克服し、明日に希望の持てる地域づくりのためにも、ふるさと回帰運動の推進は重要性なことです。
 時間がかかりますが、諦めずに一緒に頑張っていきましょう。

 第18回ふるさと回帰フェア2022へのご参加をお待ちしています。コロナを乗り越え、明日に希望の持てる国造り、地域活性化のためにともに頑張っていきましょう。

認定NPO法人ふるさと回帰支援センター
理事長 高橋 公